神子 彩さん・お母様インタビュー「ダウン症=不幸ではない」

<女優として活躍する神子彩さん・お母さまの思い>

〜ダウン症=不幸ではない〜 

今回は女優としてもご活躍の神子彩さんとお母様にレッスン後にお話を伺ってきました。 

平日は区の福祉作業所の職員として働き、週末はケイプランニングに所属して、レッスンを受けていらっしゃいます。
8月にはミュージカル「もしもしわたし」の主演をつとめられました。
神子 彩さんは身長148cmと小柄ながら、とても優しい声をしていらして、しっかりと自分の気持ちを一生懸命お話ししてくださいました。
誰もが応援したくなるような、ひたむきさがとても魅力的な女性です。

<神子彩さんの日常>
〜いつもと変わらない毎日と女優のお仕事〜 


➖彩さんは普段お母様と一緒に暮らしているのですか?➖
(彩)「はい。母と祖母と、そして猫のスープと暮らしています。スープは数年前に子猫の時に拾ってきました。私はスープがおうちに来て猫好きになったんです。スープとはとっても仲良しです。」

➖女優としてのお仕事はいつ頃から?➖
(母)「ケイプランニングに所属するようになったのは小学校6年生の終わりごろです。
 日本唯一のダウン症専門医療機関のIGクリニックの先生から、障害を持った子供たちを演技や歌などのレッスンや芸能活動を行いながら療育するクラスができるという話を聞き、参加するようになりました。」

〜好きなことに出会い、世界が広がった〜


 ➖女優のお仕事はいかがですか?➖
(彩)「私は小さい頃から歌を歌うことがとても大好きでした。レッスンに通うようになって、歌や演技で表現をすることはとても楽しいです。それに私の声がいいと褒めてくれる方もいます。母は表現することは私に向いているとも言ってくれます。それがとっても嬉しいです。もっと頑張ろうっていう気持ちになります。」 彩さんは少し考えてから、まっすぐに目を見て話してくださいました。

➖お仕事をしていて辛いことはありませんか?➖
(彩)「8月のミュージカルの練習の時、他の人のお芝居を見ていて、(役柄で)お姉さんが怒るシーンがあったんです。
私はそれを見て、お芝居なのだけれど、とても悲しくなって泣いてしまいました。私は泣き虫なところがあるんです。それと主役をやらせていただいたときはセリフや動きがたくさんあって…。
覚えるのはとってもとっても大変でした。でも、先生方や周りの友達に励ましてもらい、迷惑をかけたくないので頑張りました。」
とても感受性が強い彩さんはお芝居を見ていても感情移入してしまうことが度々あるそうです。
そして、周りの人たちの気持ちを考える優しい気遣いと責任感の強さが言葉から感じられます。

 ➖女優さんのお仕事をする前と後で変わったことはありますか?➖
(彩)「ケイプランニングに入ってから、レッスンを通してたくさんのお友達ができました。
もちろん学校の頃のお友達もいます。
この前、お友達と一緒に遊びに行くことがありました。私は歌うことが大好きなので、一緒にカラオケに行ってとっても楽しかったです。」 〜懐メロや、美しいハーモニーが大好き!〜

 ➖カラオケはお好きですか?➖
(彩)「はい、私は母と一緒にカラオケに行ったりもします。
ちょっと古い懐メロ、デュークエイセスやダークダックスが好きです。
母から教わったんです。あと、フォレスタというコーラスグループがあって、そのメゾソプラノを歌っている人が大好きで、その方から歌を習っています。歌声やピアノの音色が奏でるハーモニーが大好きです。」
 (母)「この子が小さい頃、音楽を聞かせるのがいいと聞いていたので、童謡のCDをよくかけていたのが、デュークエイセスさんやダークダックスさんが歌っていらしたものだったのですね。」

 〜お母さんのことが大好き!〜

 ➖ではカラオケでお友達と楽しい時間を過ごしたのですね➖
(彩)「はい。でも、とっても楽しかったんですけれど、私は母や祖母と一緒にいるのが好きです。お友達と一緒にいても、母や祖母が心配しているのではないかと思うと私も心配になります。」

 ➖彩さんはお母様のことが大好きなのですね➖
(彩)「はい、大好きです!ずっと、ずっと一緒にいたいと思います。母や祖母がいなくなったらと思うととても不安で悲しくなります。」 そうおっしゃいながら彩さんは優しく、そしてギュッとお母さんの手を握っていました。

<お母様の想い>

 〜子供はダウン症であってもなくても変わらない、私の大切な宝物〜




➖出生前診断についてはどのように思われますか?➖
(母)「実は私はダウン症について全く知識がありませんでした。お腹の子がダウン症だなんて、生まれる前はもちろん全く考えていませんでしたね。知ったのは生後1ヶ月頃のことで、病院の先生からお話を伺って初めて知ったのです。
もし、出生前診断を知っていて検査をしてダウン症の可能性が高いという結果が出ていたら…99%、中絶をしていたと思います。ですから、検査をしなくて本当に良かったと心から思っています。
こうして彩と出会うことができましたから。」

 <無知が偏見を呼ぶ>

〜ダウン症について知らない方にももっとよく知っていただきたい〜


 ➖他の方達が検査をすることについては?➖
(母)「出産をするにも中絶するにも、それぞれの葛藤があって結論があると思います。
ですから私は一概にこれが良い、悪いとは言えません。
当事者が深く考えて決めることだと思います。ただ、ダウン症について知らない方にももっとよく知っていただきたいと思います。私が病院で娘がダウン症と告知された時、先生からいろいろな言葉をいただきましたが、『お子さんは自慢の娘さんになりますよ』とも仰っていただきました。その時はそのようなことはありえない、ただの慰めだと思っていました。ですが、今はその通りになったのかなと思っています。」 このお母様の言葉に彩さんは涙ぐんでいらっしゃいました。
お母様の愛情をしっかりと受け止めていらっしゃいます。
そんな彩さんを見て、お母様の博子さんは
(母)「彩には友達に恵まれて、楽しいことをたくさん経験して欲しいです。人生を楽しんで、できれば死ぬ時まで穏やかに笑っていて欲しいです。」

<これからの社会に望むこと>

〜障害のマイナスな部分だけでなく、多くのことを知る機会が必要です〜


➖これからの社会の望むことがあれば教えてください➖
(母)「やはり、より多くの人にダウン症のことをよく知って欲しいと思います。無知であることが差別や偏見を生むのではないかと私は思っています。ダウン症であっても、たくさんの幸せを共有し、社会の中で生き生きと生活している人はたくさんいることを知って欲しいのです。
例えば、学校の授業でダウン症だけでなく、いろいろな障害について詳しく学ぶ機会を作るとか。
障害のマイナスな部分だけでなく、多くのことを学ぶ機会が必要だと思います。」

<将来の夢>

〜たくさんの人たちを笑わせたり楽しませたい〜


 ➖最後に彩さんはこれからどのような大人になっていきたいですか?➖
(彩)「私は月曜日から金曜日までは区の福祉作業所で事務やカフェのお仕事をやったりして働いています。それももちろん楽しいです。実際に生活しているのはそちらの方が(ウェイトが)大きいですが、私は人を笑わせることや表現をすることが大好きなので、女優さんとして演技や表現をもっと上手になっていきたいです。」

 <取材後記:和田文

とても優しい笑顔が素敵な彩さん。小学校から今までずっと日記もつけていらっしゃるそうです。
とてもキレイ好きで自分のお部屋の掃除や、リビングなどの書類もきちんと揃っていないと気になるそう。掃除機をかけたりなどお母さまやおばあさまのお手伝いもなさっているそうです。
 お話を伺っていると、考えがいろいろと溢れてきて、気持ちのままに話そうと話がさまざまな方向へと広がっていきます。
お母様はそのことがとても気になっていらっしゃるようでしたが、彩さんは自分自身で考え、素直に心に浮かんだ言葉を口にすることができます。
これは彩さんの魅力でもあると思います。
これからの彩さんとお母様のご活躍を心より楽しみにし、応援しております。
お母さまと彩さんの見つめ合う表情に心がほっこりとする、素敵な時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。    

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